
とアンニーナがパリへ発ったと聞かされても、財産処分のためだろうと気にとめない。しかし、使者に託されたヴィオレッタからの別れの手紙を読んで、激しい衝撃を受け、来合わせた父の腕の中で泣く。ジェルモンはそんな息子に、「プロヴァンスの海と地を忘れたか」と故郷へ帰ることをうながすが、アルフレードの耳には届かない。テーブルにあったフローラからの招待状を偶然目にしたアルフレードは、自分が捨てられたものと思い込み、復讐の心に燃えて飛び出していくのだった。 
第2幕第2場はフローラの屋敷の大広間。ヴィオレッタとアルフレードは別れたのだというドビニーの噂話に、フローラとグランヴィルが驚いている。タンバリンを手にしたジプシーの娘たちが歌い、仮装したガストンと闘牛士たちがにぎやかに騒ぐ中、突然アルフレードが姿をみせ、客たちとカードを始める。ドゥフオールと腕を組んだヴィオレッタがやって来たのは、折悪しくそんな時で、ヴィオレッタはそこに来たことを後悔する。カードに勝ち続けて勢いにのったアルフレードは、ヴィオレッタを侮辱するような言葉を口にし、怒ったドゥフオールとさしでカードの勝負を始める。やはり勝ちにのるアルフレード。あわや決闘という時、フローラの召使いが食事のしたくが出来たことを知らせに出る。皆が退場した後、ヴィオレッタはアルフレードをひそかに呼んで、ドゥフオールと決闘するような事態にならないよう、「愛しているのはドゥフオール」と心にもないウソを口にする。アルフレードは激怒して皆を呼び集め、ヴィオレッタが自分のためになくした財産を清算すると叫んで、賭に勝った金を投げつける。怒りにふるえる人々。アルフレードを追ってきたジェルモンは、息子の短慮を嘆くとともに、酷なようだがヴィオレッタの真心は胸に秘めておこうと歌う。我にかえったアルフレードは自分の行為を後悔するが、怒りに燃えたドゥフオールからは決闘の合図である手袋を投げつけられ、その場から去る。
第3幕は、ヴィオレッタの寝室。冬、謝肉祭の日の早朝である。もともと肺病を患っていたヴィオレッタは、病状が進み、明日をも知れない状態になっている。音楽は、第1幕の前奏曲と同じテーマで始まり、第1ヴァイオリンの繰りひろげる旋律が、消えゆくヴィオレッタの生命を描ききって見事である。朝の7時、のどの乾きに目を覚ましたヴィオレッタと、看病に疲れて居眠りをしていたアンニーナとの寂しい会話で始まる。グランヴィルが往診に立ち寄り、長くはもたないだろうとアンニーナに告げて去る。ヴィオレッタは、ジェルモンから届いた手紙を出して読む。そこには、決闘でドゥフオールが傷ついたが命に別状ないこと、アルフレードが外国からいずれ戻ること、ジェルモンも来るつもりであることが書かれているが、もう遅い。「アルフレードの愛だけが支えだったけれど、もうすべてが終わった」というアリアが歌われる。オーボエを伴った寂しい音楽である。対照的に賑やかな謝肉祭の合唱が聞こえる。そこへ、アンニーナがかけ込んでくる。アルフレードが戻ってきたのだ。二人は、固く抱きあい、アルフレードが、「パリを離れた遠い所で、二人だけの生を歩もう」と歌い出す。“パリを離れて”として有名な二重唱である。ヴィオレッタは、教会へ行って式を挙げようとするが、服を着る力さえ残っていない。アンニーナは、あわてて医師を呼びに出ていく。「こんなに若くて死ぬなんて」と嘆くヴィオレッタ、それをなぐさめるアルフレード。そこへジェルモンが到着し、自分のやり方を深く後悔するが、すべては手遅れだ。死期の近づいたヴィオレッタは、自分の肖像の入ったペンダント(ブローチ)をとり出し、アルフレードに形見として手渡して、若くつつましい娘と愛し合うことがあったら、それをさしあげて、と言う。突然ヴィオレッタは立ち上がり、「不思議だわ、苦しみが消えて、生きかえったような気がする」とつぶやくが、崩れるようにアルフレードの腕の中に倒れ、息を引きとるのだった。 (二期会会員、千葉大学助教授) 浜松市民オペラプログラムより転載させていただきました。
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